第3回_株式会社HK STYLE ―起業家インタビュー― 起業の原点から読み解く、挑戦し続ける起業家たち

福岡・天神に拠点を構える株式会社HK STYLEは、建築3D制作を軸に、AR名刺「ONCARD」やARプロモーションを展開するデジタルクリエイティブ企業である。

建築図面の可視化から、紙媒体を「体験」へと進化させるARサービスまで、同社の技術は企業の“伝える力”そのものを変えつつある。

しかし、その歩みは、最初から起業を志して始まったものではなかった。

「技術を身につけたい」──その純粋な思いから始まった道は、やがて独立、法人化、そして新たな市場の創造へとつながっていく。

本インタビューでは、株式会社HK STYLE代表取締役 木村華氏に、起業の原点から現在、そして未来への展望までを伺った。

目次

起業の原点

「起業しよう」と思っていたわけではなかった。
木村氏は、最初から経営者を目指していたわけではなかった。

「正直に言うと、起業したいという明確な意思はありませんでした。
ただ、自分の技術で仕事をしたいという思いはずっとありました。」

大学卒業後、施工図事務所でCADオペレーターとして働き始めた木村氏は、そこで出会った仲間と共に小さなチームを結成し、建築3D制作に携わるようになる。

制作だけでなく、スタッフ管理や営業にも関わる中で、技術者としてだけでなく、「仕事を創る側」の視点を自然と身につけていった。

転機は、そのチームを離れることになった時だった。
建築士資格を持たず、しかし高度な3D技術と実務経験を持つ人材に適した求人は、当時ほとんど存在しなかった。

そんな時、周囲からこう言われたという。
「個人事業主なんて、紙一枚で始められる。」

その言葉が、起業への第一歩となった。

幼少期・学生時代の原体験

「手に職を持つ」という価値観

木村氏の価値観の原点は、幼少期の家庭環境にある。

父は医師、祖父は鍼灸師。
いずれも、自らの技術で社会に貢献する専門職だった。

「小さい頃から、“手に職を持つ”ということは自然と意識していました。
自分の技術で生きていくことは、当たり前の選択肢でした。」

学生時代にはコンピューターグラフィックスに強い関心を持ち、映像やCGの世界に魅了される。
中京大学情報科学部で3DCADやデザイン工学を学び、「形のないものを可視化する技術」の基礎を身につけた。

この“見えないものを見えるようにする”体験が、現在の事業の根幹となっている。

創業の直接的なきっかけ

「需要はあるのに、担い手がいなかった」

建築業界に関わる中で、木村氏は大きな機会を見出す。
当時、国の方針により、建築業界では3D CADなどの導入が急速に進められていた。
しかし、実際にそれを扱える人材は極めて少なかった。

「導入は求められているのに、できる人がいなかったんです。」
その数少ない技術者の一人であった木村氏は、独立後すぐに評価を得る。

制作した3Dデータを見た大手ゼネコンの設計担当者が、「これを作ったのは誰だ?」と問い合わせてきたことが、新たな仕事につながった。

やがて将来の取引拡大を見据え、法人化を決断。
こうして株式会社HK STYLEが誕生した。

創業初期の最大の困難

経営者として初めて背負った「責任」

創業当初は、紹介案件や既存の取引により、売上は安定していた。
しかし、予期せぬ出来事が起きる。

かつての優秀な仲間から病気により一般企業で働けなくなったと連絡を受けた。
木村氏は彼を支援するため、自社のPR動画制作を依頼し、報酬を支払い続けた。
しかし、その結果、会社の資金は減少していった。

「その時、経営とは責任を背負うこと、そして従業員を雇うという責任こそが今まで会社が続いてる大きな要素だと実感しました。」
それは、技術者から経営者へと意識が変わる重要な転機となった。

困難を乗り越えた決断

「覚悟」が経営者をつくる

資金減少という現実を前に、木村氏は決断する。
それまで並行していた派遣業務を辞め、事業に専念することを選んだのだ。

「守るのではなく、攻めるしかありませんでした。」
営業活動を強化し、既存顧客との関係を深め、事業は再び軌道に乗っていく。

この経験を通じて、木村氏は“経営者としての覚悟”を確立した。

事業の転機

技術の転用と発想の拡張

建築で培ったAR技術は、当初は図面の可視化にとどまっていた。
しかし、近年広がる“推し活”文化に触れたことで、その技術は「体験を拡張する装置」になり得ると気づいた。

やがてその発想は、より普遍的な問いへとつながっていく。
名刺や口頭説明だけでは、本来伝えたい魅力や情報は十分に伝わっていないのではないか。

「紙を入り口にして、デジタルで体験を拡張できないか。」
この発想から生まれたのが、AR名刺「ONCARD」である。

ONCARD誕生

「紙」を「体験」に変える

ONCARDは、名刺にスマートフォンをかざすことで、動画や3Dなどの情報を表示できるARソリューションである。
紙の信頼性と、デジタルの表現力を融合させた、新しいコミュニケーションツールだ。

「紙は残ります。でも、紙だけでは伝えきれない。
だから“体験”にする必要があると考えました。」
現在はAI連携など、さらなる進化を続けている。

経営理念

最先端技術の「民主化」と、新しいコミュニケーションの創造

株式会社HK STYLEの根底にある思想は、
「最先端技術を、限られた人のものにしないこと」です。

3D、AR、CG、メタバース――
これらは本来、専門家や一部の企業、資本力のある組織だけが扱えるものではありません。

木村氏が目指しているのは、リアルとデジタルを融合させることで、誰もが扱える技術へと“民主化”すること。

建築3Dにおいては、現場、設計者、施主が同じビジュアルを共有することで、新しい対話が生まれ、そこから新たな発想や価値が創出される。

AR名刺「ONCARD」においても、紙というリアルな接点にデジタル体験を重ねることで、これまでにないコミュニケーションを生み出している。

技術そのものが目的ではなく、技術を通じて、
人と人の間に新しいコミュニケーションを生み出すこと。

それこそが、HK STYLEの経営理念である。

現在の課題

1.建築業界の変化とAIの台頭

建築分野では、業界構造そのものが大きく変化している。
AIの進化で、ビジュアルパースや3D制作は「外注しなくても作れる」時代になりつつある。
つまり、従来型の制作業務は今後確実に縮小していく可能性がある。

その中で求められるのは、AIに置き換わらない価値の創出と、変化への柔軟な対応力。

「作る」だけではなく、どう活用するか、どう価値を高めるか――
そこまで踏み込める企業へ進化していくことが大きな課題である。

ONCARD事業の資金と認知拡大

AR名刺「ONCARD」は、まだ始まったばかりの挑戦。
ゼロからの立ち上げである以上、最大の課題は資金繰りと認知の拡大。

プロダクトの可能性は大きい。
しかし、広く知ってもらわなければ市場は動かない。

今はまず、「存在を知ってもらうこと」
それが最優先課題である。

今後の展望

HK STYLEが目指す未来は明確だ。

リアルとデジタルを組み合わせ、誰もが直感的に使えるコミュニケーションツールを創ること。

専門家だけのテクノロジーではなく、中小企業や個人事業主、一般の人々でも扱える仕組みへと落とし込む。

建築の世界で生まれた「可視化による対話の創造」という思想を、名刺、広告、営業、教育など、あらゆる分野へ拡張していく。

目指しているのは、単なる制作会社ではない。

“技術を民主化するコミュニケーションカンパニー”

それがHK STYLEの未来像である。

起業家へのメッセージ

木村氏自身、かつては「自分は経営に向いていない」と思っていたという。

数字も苦手。
商売っ気もない。
起業など考えたこともなかった。

しかし、やってみた結果、10年以上続いている。
だからこそ伝えたいのは、「今の自分の思い込みで、自分の可能性を決めないこと。」

興味がない分野に飛び込んでみる。
真逆の意見も同じ量だけ聞く。
期待に応えようと本気で向き合う。

そして最終的には、自分で決断する。

人を100%信じ切るのではなく、しかし自分の判断は信じる。
経営とは、判断の連続であり、その積み重ねが自分自身を鍛えていく。

チャレンジのない人生は、面白くない。
挑戦の中でこそ、自分の隠れた才能に出会える。

HK STYLEの歩みは、まさにその証明でもある。

あとがき

株式会社HK STYLE代表取締役 木村華氏と、インタビュアーであるインプレス福岡株式会社代表 石松道右との出会いは、司法書士 池田龍太氏のご紹介に遡ります。

木村氏が法人設立登記を池田氏へ依頼された際、その法人設立印の制作を、以前から交流のあった石松へ池田氏がご紹介くださったことが、ご縁の始まりでした。

法人設立という人生の大きな節目に刻まれる「印章」。
その瞬間に立ち会えたご縁が、こうして起業家としての歩みを改めて伺う機会へとつながったことを、大変嬉しく思います。

この貴重なご縁をつないでくださった池田龍太氏に、心より感謝申し上げます。

人との出会いは、時に人生を変え、ビジネスを大きく前進させる力を持っています。
これからもインプレス福岡は、法人設立印の制作を通じて、挑戦する起業家の第一歩と、その先に広がる物語に寄り添い続けてまいります。

AR名刺「ONCARD」開発/ARプロモーション・3D建築CG制作
株式会社 HK STYLE

\お問い合わせはこちら/

目次