はんこ屋さんの本当の仕事

多くの人と通じ合えること・・・

私自身がこの福岡の地で成し遂げたいものは、多くの人に感謝される経営者を最低でも1人サポートし育てることです。もっと付け加えるなら、起業されて株式を上場されるまでのお手伝いをしたいと思っております。

私は2000年(平成12年)に脱サラして現在のはんこ屋さんを始めました。はんこに興味や魅力を持っていた訳ではなくて、はんこという一つのアイテムを通して多くの人と通じ合えることに、この仕事の一番のやりがいと魅力を心底感じました。私の中から熱い何かが湧き起こってきたことを昨日のことのように覚えています。

当時の私は、30歳代後半というある程度ビジネス社会に揉まれてきた経験、そして気力的にも体力的にもパワー漲る年齢で、自分自身のすべてを目の前にある仕事に捧げ切る想いで精力的に動き回りました。新たなビジネスチャンスに出合う事やこれまでにないビジネスチャンネルを見つけ出そうという垂涎の思いは、誰よりも強く持っていたと自負しております。

福岡市中央区役所の真ん前という一等地に店舗を構える事が出来て、当時のまだまだデジタル以前の世の中に、私のアナログ営業は面白いように的を突き続けました。

法人印販売戦略を1例に挙げますと、自社店舗周辺を綿密に調査して、セグメントして確実なターゲットを絞った営業などが功を奏して、福岡法務局の管轄地区の法人設立件数の20%に迫る法人設立印を受注納品することが出来ました。このことはある程度は、この福岡での起業家のお役に立つことに繋がっていたと思っております。

お客様の本来の目的は・・・

創業当時から1店舗のみのはんこ屋さんとしては、社員を数名雇用する異例の経営体制を執っており、平均的なはんこ屋さんの数倍の売上高を確保していました。

当面はこれらの経営体制を強化しながら進み続けてきましたが、ある時期にはんこを売ることが、本当の仕事ではないという思いが徐々に湧き上がってきました。2000年の起業当時の私に一番仕事のやる気を出させてくれた、「多くの人と通じ合える」に一旦立ち戻った時に、これまでのはんこの売り方やお客様との接客方法に疑問を感じ出すようになってきたのです。

起業を決意した人、所謂、起業家が弊社にご来店されてはんこの注文をされます。確かにはんこを購入されるためにご来店されますが、本当の起業家の目的は起業してその方の商品やサービスを通して世のため、人のためにお役に立ててその結果、ご自身も幸せになることです。

つまり、はんこは起業するための一つのアイテムであり、はんこそのものを購入することが本来の目的ではないと考えるようになったのです。

起業家が幸せを見つけるまで・・・

その後、多方面から起業に関する様々な資料を入手して、起業家の起業後の実態を調べてみました。起業しても3年から5年も経てば半分ほどが消えていき、更に10年後まで生き残っている会社は2割も存在しないという強烈な事実を知った時、自分自身も起業してから足踏み状態どころか、資金繰りや社員の雇用などで苦しみ出した頃でした。

多くの起業家は自社商品・サービスについては当然のことながら十分なノウハウは持ち合せているが、それらを販売する営業方法や販売先を見出すことに苦労しているという事実がはっきりと分かってきました。また、まったく私も同じでしたが、起業家の多くは経営についての最低限の学びが足りない。もっと端的に言えば、サラリーマン時代のトップ営業マンが根拠のない自信と共に起業して、経営に関する勉強をほとんどしたことがないために多くの起業家が経営自体で苦しみ、また行き詰っているということも分かったのです。

特に資金繰りに困り始めると、月末の支払いに追われて経営を上手く回していく道筋から外れていき、たちまちの内に崩れていきます。

弊社の経営理念、「起業家・経営者の成功を支援する」に基づいて、数年前から経営についての勉強会を企画開催してきました。これまでの勉強会の内容を思い起こすと、学びそのものや勉強会に参加される方々のマッチングや結びつき、そこから新たな出会いから新たなビジネスが生まれたかと問われると、明快ないい返事ができないのが正直なところです。

はんこ屋さんの役割は、始まりをサポートすること。そして、はんこ屋さんの本当の仕事とは、起業家に対しては、サポートすることはもちろん、それだけに終わらず起業家にとっていい情報やいい学びを提供し続けることだと考えております。起業するのに必要なはんこを作っただけでは終われないのです。起業家が険しい道を突き進んで、幸せを見つけるまでがはんこ屋さんの仕事だと考えております。