TOP > 我が社の起業と苦労話し

第1回 グランドウエア㈱ 金丸 博様  /  第2回  ㈱ジャパンシーフーズ 井上 幸一様
第3回  (有)リード・クリエーション 福泉 礼二様  /  第4回  ㈱アビリティ・キュー 貞池 龍彦様
第5回  クサカベ印刷 日下部 俊明様  /  第6回  ㈱ビッグロードBIG ROAD 金川 俊一様
第7回  有限会社近藤スタジオ 近藤 宏一郎様  /  第8回  (有)羽山プロジェクトオフィス 羽山 直臣様
第9回  設備設計 有限会社シード設計社 鶴 澄様  /  第10回  シーエススチール株式会社 松原 照明様
第11回  有限会社建装舎 小澤 喜芳様  /  第12回  有限会社ショップハチ・ナナ・ハチ 田中 正春様
第13回  岡部不動産株式会社 岡部 利行様  /  第14回  おかはち事務所 岡部 八郎様
第15回  株式会社ティーアイプロジェクト 石川 哲也様


-お客様の楽しみをお手伝いできることが生きがい-株式会社ティーアイプロジェクト 石川哲也様


福岡市中央区で旅行代理店を経営されている石川哲也様にお話を伺いました。
起業されて今年7月で20年目の節目を迎えられます。一般的なツアーからお客様にご要望に沿ったオリジナルの
プランまで様々な種類の旅行プランを取扱っていらっしゃいます。




高校卒業後、東京の大学へ進学し就職も東京で考えていました。
旅行業に興味があった訳ではなく、この業界に飛び込んだのは、従兄弟が勤めていた旅行代理店へ誘われたことがきっかけでした。福岡市に本社がある旅行代理店で自分もいつか福岡へ戻りたいと思っていたこともあり、就職を決めました。東京支社と福岡本社の転勤を繰り返して10年間勤めました。
入社して最初の1~2年目はとても仕事がきつくて日々苦戦を強いられていたのを覚えています。航空券を企業様へ届けることがウリの会社であったため、ひたすら原付バイクでお客様のところを走り回っていました。会社の業務は、航空券を取扱う部門と旅行を企画する部門とに分かれており、入社後、社員は全員が航空券の部門を経験するものでした。旅行代理店といえばツアーで国内や海外などいろいろな観光地へ行けると思っていた自分にとっては正に修行でした。

入社して3年が経った頃、このままではいけないと奮起しました。航空券の部門はお客様からの問い合わせが来ても、それをそのまま営業部へ取り次がねばなりません。旅行の内容を企画することも、一緒にツアー添乗することもありません。
周囲を見れば、自分より若い社員なども一緒に仕事をしています。そういう同僚に先を越されてたくないと思い奮起したのでした。

なんとかして仕事に繋げようと、飛び込み営業でお客様のところに訪問する時に名刺を渡すだけでは印象が薄く、ポケットに栄養ドリンクを忍ばせ、挨拶と同時に「お疲れ様です!」と差し出していました。先方様もそんな私の営業手法に興味をもってもらえ、そこから肝心な仕事の話に繋げるように工夫をしたのです。そういった努力の甲斐もあって営業成績を上げることができました。

その後、勤務年数を重ねていく中で様々な部署で仕事をすることが出来ました。旅行商品の企画をする部署では、沖縄ツアーで小中高生を対象に「米軍基地へプチ留学」という商品を企画しました。これは日本に居ながらにして、あたかも海外に留学している雰囲気を味わってもらうものです。この商品を体験されたお客様がその後、実際に海外へと留学されたことも多々ありました。
企画した商品の全てが人気のツアーになる訳ではありませんが、旅行情報誌に掲載されるなどしたこともありました。
その後、添乗員や一般営業の部署で仕事をしました。旅行という商品は、自社商品として形が残るものはありません。航空券や宿泊先などを巧みに組み合わせていきながらプランを作っていきます。ツアーに参加したお客様の反応はそのプランを提案した自分達に返ってきます。いいプランだったと満足され楽しまれた時は、ありがとうと喜ばれますが、当然その逆もあります。宿泊先の対応などが悪ければ、自分たちがお客様からお叱りの言葉をいただきます。そういうことも直接お客様とコミュニケーションが取れるなど、その辺りもこの仕事の面白いところですね。





勤め初めて10年が過ぎた頃、会社が倒産する事態に見舞われて退職を余儀なくされました。 東京に見切りをつけて福岡に戻ってきましたが、自分が希望する旅行業の仕事にめぐり合えず、福岡市内のシティホテルへ転職しました。フロント業務に配属され、この業界の洗礼までとは言えませんが、自身の言葉遣いなど一字一句まで修正されました。また、旅行業界で使ってきた電話対応などの言葉使いも適切と思っていたのでしたが、ホテルでは全くと言っていいほど通用しませんでした。この時のホテル業界で学んだ言葉使いや電話対応などは、現在も非常に役に立っています。

ホテルで仕事を続けている間も旅行業界へのパイプはあり、いずれは旅行の仕事に戻りたいという気持ちは持ち続けていました。そんなある日のこと、ある旅行会社が廃業する、直ぐにでも仕事につながる情報を持った営業マンが2人 いるという話が飛び込んできたのです。
今すぐに決断しないとせっかくの願ってもない話が他社へ流れてしまうという急を要する話しでした。
いつかは旅行業界へ戻りたいと強く考えていた想いを自らが起業するという形で実現する事になったのです。
元々、会社を設立しようと考えていた訳ではなく、旅行業界へ戻りたいと思っていただけでした。当時はバブル景気が弾けた後で、子供も小さかったために妻からは反対されました。それでも今までと同じだけの生活が出来るようにすると約束して起業へと踏み切りました。





起業して事務所は中央区大名に構えましたが、本当に急な会社立上げだったので、当初は前職を続けながらの掛け持ちでのスタートとなりました。 営業担当2人、経理担当1人と自分の4人でスタートしました。スタート後、なんとか仕事をしているような状態で、お金の管理が上手く出来ていない時期がありました。そのため、使途不明金や未回収の売掛金などが積み重なって、なんと起業して3年目で倒産寸前まで追い込まれてしまいました。 支払いが滞って何とか事業をいい方向に立て直そうと必死で仕事をしていましたが、会社が危ないと感じていた社員達は次の転職先を探すなどして、仕事どころではなく会社の雰囲気が非常に悪くなっていました。精神的にも本当に苦しい時期でした。
ある日、営業から帰社したとき、ある管理職の社員がお客様と電話している会話の中で、お客様に対して会社をたたむといった内容を話していたのです。社長である自分はまだ何とかしようと頑張っているのに、その時はさすがに「誰が廃業すると言ったか!」と声を荒げました。そうは言っても会社の存続が危ないのは否めなく、社員達はどんどん辞めていきました。

当時、福岡だけでなく首都圏でも支社を出して人を雇って仕事をしていました。どうしようかと追い詰められ、母親が一人で暮らしていた実家を売却し、滞った支払いに当てる事にしました。母にその事を伝えるときは、かなり度胸が要りましたね。

実家の売却先が決まり、引越しをする日に親戚や友人など15~16人ほどが手伝いに来てくれました。家財道具などを捨てるのは勿体ないので、要るものがあれば引き取ってもらうように頼んだのです。引越しが終わると親戚からは親の家を売却するなんてと非難の嵐でした。 そんな中、高校時代の友人が集まっていた人達に向かって一喝してくれたのです。「今日の引越しを手伝いに来た人や物をもらいに来ただけの人など、それぞれいると思います。彼は今、実家を手放して、また事業も上手くいってなくて彼にとって一番辛い時期だと思います。でも、これから先5年、10年後を見ていてください。きっと彼は今より立派は家を母親にプレゼントできるような人間になります。」と話しをしてくれたのです。
それこそドラマを見るような場面でした。周囲の人は自分に非難を浴びせていたのに彼の言葉は違いました。心から嬉しかったですし、その言葉にはとても救われました。

実家を手放してから数年はその時の夢を見ていました。ふと目を覚まし2階の寝室から1階のリビングを眺めると自分の家なのにまったく知らない家族がそこで生活しているという夢です。後悔や母親に対する罪悪感からそんな夢をたびたび見る時期は、本当につらい日々を過ごさざるを得ませんでした。






借金返済のために両親が建てた家を売却しましたが、それでも借金を完済することは出来ずに、なんとか首の皮一枚残ったような状態でした。この頃から妻にも仕事を手伝ってもらい、経理の人と3人で再スタートさせました。

株式会社ティーアイプロジェクトは、今年の7月で20年を迎えます。リーマンショック以降は企業が出張費などを削減することが多くなっています。雇用形態が多様化したことで社員旅行なども減り、50人~100人規模の旅行をする企業はほとんど見られなくなりました。
そこで従来通りの旅行商品では、お客様に満足して頂けずに個人向けのバスツアーなど、これまでにない面白い企画を用意しています。
歴史の偉人から元気をもらう旅としてガイドと一緒に歩いて回れるツアーなど、観光だけでなく知識が身につくツアーなども定期的に開催しています。この企画は地元のテレビ局で紹介されました。観光地へ行って勉強できるという点では、社員研修など、単なる旅行ではなくて社内研修としてこれから企業の方にも活用していたいただける内容だと思います。時代に合わせた企画を提案していけたらと思っています。




旅行番組などで様々な観光地が紹介されます。
時には写真やテレビの方が綺麗に見えることもあります。
しかし、実際に現地に行かないと分からないこと、現地だからこそ体験できる事や
様々な出会いもあります。
実際に現地に足を運ぶ事で日本の良さが再確認できたりもします。
自分は乗り物に乗るのが好きなのですが、目的地に到着するまでの間も魅力的なことは
多くあります。
電車に乗って車窓からの風景をぼんやり眺めながら、そこで暮らす人々の生活を想像したり、どんな場所なのか空想したりするのが好きです。





まだ先の話しになりますが、後継者を育てたいと
思っています。
今のままの状態で会社を子どもに引き継がせても経営が
厳しく、 借入金などの返済を終わらせてから娘か息子が
会社を引き継いでくれればと思っています。
もちろん自分が動けるうちは、しっかり頑張って
いきます。



会社ホームページはこちらから




ありがとうございました。
平成28年3月2日取材


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