TOP > 我が社の起業と苦労話し

第1回 グランドウエア㈱ 金丸 博様  /  第2回  ㈱ジャパンシーフーズ 井上 幸一様
第3回  (有)リード・クリエーション 福泉 礼二様  /  第4回  ㈱アビリティ・キュー 貞池 龍彦様
第5回  クサカベ印刷 日下部 俊明様  /  第6回  ㈱ビッグロードBIG ROAD 金川 俊一様
第7回  有限会社近藤スタジオ 近藤 宏一郎様  /  第8回  (有)羽山プロジェクトオフィス 羽山 直臣様
第9回  設備設計 有限会社シード設計社 鶴 澄様  /  第10回  シーエススチール株式会社 松原 照明様
第11回  有限会社建装舎 小澤 喜芳様  /  第12回  有限会社ショップハチ・ナナ・ハチ 田中 正春様
第13回  岡部不動産株式会社 岡部 利行様  /  第14回  おかはち事務所 岡部 八郎様
第15回  株式会社ティーアイプロジェクト 石川 哲也様


-お客様のリクエストには100%お応えします-有限会社ショップハチ・ナナ・ハチ 田中正春様


大手門で花屋をされている田中正春様にお話しを伺いました。 ある日、ホテルのパーティーに出かけ、そこで初めて本格的にディスプレイされた数多くのフラワースタンドを目の当たりにされた時、それまでに味わったことのない大きな衝撃を受けられました。
それが元となり、それまで勤めていたサラリーマンを辞して花屋になることを決められたそうです。




高校を卒業した後、音楽会社の代理店を経験し、業務用のワックスなどを取扱う会社のサラリーマンとして働き始めました。サラリーマン時代にはワックスのサンプルが入ったかばんを持ち、企業のオフィスを回りました。実際に目の前で洗剤を使ってカーペットなどを綺麗にして見せ、契約していただく形で営業をしていました。半期を通して売上が良かった人は海外へ旅行に行けるという会社の制度があり、それを利用して海外へ行く人もいました。そういった経験をし、海外を見てきた人は、もっと大きくならなくてはと思い会社を辞めていく仲間も少なくありませんでした。

そんなある日、ワックスを購入いただいたお客様の所有するホテルの落成式があり、自社からお花をプレゼントしたことがありました。自分もその会場へ行ったのですが、自社から送られたお花が廊下に並べてありました。
今まで、花など気にした事も無かったのですが、初めてそれを見たときにとても感動しました。 花が開いているのか、閉じているかも気にしていませんでしたが、その姿を見たときに、これを仕事にしよう!と思いました。

その後、友人に勉強をするために花屋を紹介してもらいました。最初の入った花屋では花の売り方を習いました。売り方の次は技術が必要だと思い、別の花屋へ転職します。そこで、結婚式や葬儀などで飾る花や花束の作り方などを勉強しました。先輩達に仕事を教えてもらうために、9時開店だったにも関わらず、朝6時過ぎには出勤し、花の水換えや先輩達のコーヒーを準備するなど、できる仕事をこなしました。

その勉強期間を経て、1980年に早良区西新の地下に場所を借り、4.5坪という小さなスペースから自分の花屋をスタートしました。 これが起業までの経緯です。





初めて商売を始めたのが6月15日でした。忘れもしません。販売初日はまったく売上が上がらず、しょうがないので、たたき売りのような形で花を売り始めました。すると、人が足を止めるようになり売れ始めました。

そのような形で仕事を続けていたとき、JC(福岡青年会議所)に入会する機会がありました。名刺を配り、自分の仕事を知ってもらおうと一生懸命になっていました。名刺交換をして頑張って宣伝すれば花を買ってくれると思っていました。しかし、売込ばかりが見えてしまうと駄目だということに気づきました。

その当時、中洲のクラブなどにも納品していた事もあり、お客様から別のお客様を紹介してもらうことも多々ありました。
紹介いただいたお客様から電話が入り、店舗の所在地を尋ねられても当時は店舗が分かりづらい場所に構えていたためにお客様がスムーズに来店できませんでした。


これでは駄目だと感じ、大手門の比較的に分かりやすい場所に新たな店舗を構えました。 バブル期という非常に景気のいい時代で、花屋も例外なくとても売上も上々でした。一般の企業やブティック、夜の社交場など、1度の納品でかなり高額の仕事を毎週のように受注して、とても花が売れていました。
その当時は、外国製の車を所有して、また、家族で海外旅行へ出かけるなど、売上が大幅に上がっており、正に天狗の状態になっていました。

しかし、そういう贅沢な生活状況もバブルの崩壊と共に一変しました。 バブルが崩壊して人々が、特に企業がお金を使わなくなったことで、花はまったく売れなくなりました。装飾品であるお花にかけるお金は真っ先に削減され、売上が急降下したのです。 一気に売れなくなりこれからどうしようかと思っていた時の事です。たまたま新しくできたホテルに花を届けてほしいという注文がありました。話しを聞いていると、なんと前職のサラリーマン時代に出入りしていたホテルだったのです。
そのホテルが従来取引をしていた花屋さんとの取引がうまくいかずに自分のところへ仕事の話しが回ってきたのでした。
しばらくその会社から注文が続き、その後も利用してもらう機会がありました。あるとき、新しい店舗を作ったので、その店舗の装飾として植え込みを作るという仕事の依頼があり、意気込んでスタッフ共々で集中してその仕事にあたりました。しかし、その店舗オープン前日の話です。その会社の社長が新しくオープンする店舗のことで気に入らないことがあったらしく、激怒してオープン中止と言い始めたのです。こちらとしては売上がかかっているため、どうしたものかと困ったということがありました。

バブルが弾けた後は、売上が思い通りに伸ばせなくて、7人ほどいた従業員を解雇せざるを得ず、店舗も昭和通りに借りていた倉庫兼店舗へ移転しました。 倉庫兼店舗では電話で受注対応することが多く、会議用のお花などはまったく受注が来なくなりました。一方で葬儀用のお花などを受注する機会が増えていきました。
売上は上がらずに資金が足りなくなり、支払いができないこともありました。 親に借金したこともありました。

資金以外でも大変だったことがあります。それは門松の注文を受けた時のことです。1社分門松の発注が漏れていたことがわかり、1つ足りないということがありました。門松など縁起物で納品に間に合わないなどありえません。片っ端から周りの花屋に電話をかけ続けました。松が1つでも余っていないか、どうしても見つからない、造園業者に作ってもらうにも松の在庫がない・・・という状況で途方にくれました。頭を抱えたその時、知り合いの花屋から1つだけ門松が余っていると電話がかかってきました。そこまで親しい間柄の人ではなく、まさか連絡が来ると思わず助けていただいて本当にありがたかったです。 こういった一連の出来事を体験して、自分がお客様や家族、周囲の人のお陰で生活できているという事を実感しました。そういう考え方に変わっていったのは倫理法人会に入会したことが大きいと思います。自分が変わらないと現状は変化していかないことを学びました。

大変なときほど、ケチらない、焦らないことです。商売を通して学ぶことよりも倫理法人会で学ぶことが多くあり、それまでは売上を上げることに気持ちを集中させていたのですが、倫理法人会で学んでお陰で肩の力が抜けました。
儲ける事が1番ではなくなりました。それからは気持ちに余裕ができ、楽しく仕事ができるようになりました。お陰様の気持ちが大事ですね。





中洲のブティックやクラブなどにお花を配達していたこともありましたが、身なりはきちっとする事に気をつけています。
発注されたお客様の代理でお花をお届けしているので、ジーンズに作業用のエプロンで配達するのは筋が違うと思います。いつどこでどなたに会うか
分かりませんから、休日の日曜日以外はネクタイ着用を常としています。

また、お客様のリクエストには100%応えるということです。
「他のお店ではできないと言われました」ということも必ず
対応しています。

過去にこんな依頼がありました。ある方に花束を届けてほしい、時間は深夜12時にお願いしたいという依頼でした。なぜ深夜12時かというと、相手様の誕生日だからサプライズで届けて欲しいということでした。そして当日深夜12時5分前にお届け先行きました。夜中もしかしたら届け先の相手が出てこないかもしれません。案の定、インターホンを押しても相手は出て来ません。どうしようかと待っていると、中から人が出てきて無事にプレゼントすることができました。そんな時間に配達を受ける事など、なかなかできませんよね。 何よりもお客様が自分のところに仕事を頼んでくれたという気持ちが嬉しいですね。






お店を大きくしたいとは思っていません。広めていこうではなく、コツコツ生きていける範囲でいいです。生活できる貧乏というか・・・。
初めてお花を見たときに受けた衝撃から「花屋しかない」と思って仕事をしています。もしも売れなかったら、売り歩けば良いと思ったくらいです。

普通、お花を贈るときは、お店を知っているから注文するのではなく、近くにお店があったから頼むということがほとんどです。
例えば、お葬式にお花を届けてほしいという話しがあったとき、知り合いに花屋がいても、配達の必要がある、費用がいくらで配達料がいくらで・・・という話しをすると、だったら葬儀場にかかり付けの花屋へ頼むからという話しになります。花は仕入れ値で販売額が変わります。なので、いくらでも技術でカバーする事ができます。過去にそれだけ技術を学んできた事で今はお客様から3万円のお花を用意してほしいと言われても、ひるむ事も迷うこともなく対応することができます。つまり、売ることが先ではなくて、技術が先ですね。

お客様が喜んでくれる仕事をすることです。前述したように花屋は技術だけでなく、花の管理など大変な仕事です。でもそれは当たり前のことですよね。
それでも謙虚な気持ちでいることはこれからも続けたいです。




ありがとうございました。
平成27年9月29日取材


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