TOP > 我が社の起業と苦労話し

第1回 グランドウエア㈱ 金丸 博様  /  第2回  ㈱ジャパンシーフーズ 井上 幸一様
第3回  (有)リード・クリエーション 福泉 礼二様  /  第4回  ㈱アビリティ・キュー 貞池 龍彦様
第5回  クサカベ印刷 日下部 俊明様  /  第6回  ㈱ビッグロードBIG ROAD 金川 俊一様
第7回  有限会社近藤スタジオ 近藤 宏一郎様  /  第8回  (有)羽山プロジェクトオフィス 羽山 直臣様
第9回  設備設計 有限会社シード設計社 鶴 澄様  /  第10回  シーエススチール株式会社 松原 照明様
第11回  有限会社建装舎 小澤 喜芳様  /  第12回  有限会社ショップハチ・ナナ・ハチ 田中 正春様
第13回  岡部不動産株式会社 岡部 利行様  /  第14回  おかはち事務所 岡部 八郎様
第15回  株式会社ティーアイプロジェクト 石川 哲也様


-浸透する経営理念-シーエススチール株式会社 松原照明様


鋼材やステンレスといった素材の販売や二次加工業をされているシーエススチールの松原様にお話しを伺いました。
松原様は企業理念について独自の研究をまとめた「浸透する経営理念」の著者でもあります。2回にわたり、著書の事、会社のことを取材させていただきました。




元々、自分の父が経営する鉄鋼商社でサラリーマンをしていました。その会社でCSロールという商品を開発し、それを販売するために会社を立ち上げようと思ったことが起業のきっかけです。今から24年前、1992年のことです。

当時、私の起業話しを父と兄に相談すると反対され止められました。私のことを考えてのことでしたが、それに反発する形で会社を起こしました。その当時は商品の特許を取ったことや、21世紀には絶対に必要な商品だ、販売したら絶対に売れるという「根拠のない自信」があり、会社としてやっていけると思っていました。

しかし、実際に会社を立ち上げてみると、まったく商品が売れません。理由として、新しく立ち上げた会社で自分達に信用がないことがありました。鉄鋼関係の仕事は第一に信用取引で行われています。電話1本で発注書も出さず1億ほどする商材の取引を行います。信用がないとやっていけない業界なのです。そのために売上がほとんどなかった起業当時は、やはり信用を作るところから始める他ありませんでした。

商社との取引が出来ないということは仕入れが出来ないということで、仕入れがなければお客様に商品を販売する事も当然できません。父と兄の反対を押し切って始めたことで、支援などは一切ありませんでした。結局、全ての商社と取引が出来るように信用を得るのに12年という永い年月がかかってしました。
起業してからの初めの2年間は何とか会社を黒字決算にして周囲に見返すことが発奮材料となり仕事の支えと成っていました。





会社を立ち上げてから8年ほど経過したころ、それまで順調に進んでいた事業が上手く回らなくなりました。自分の中でいったい何がしたいのか、という問いが生まれ、その答えが見つからず悶々とした時期でした。自分は経営者として学びが足りないと思い、有名な経営者のすることを真似てみようと書店へ行きました。さまざまな企業の本を読む中で、企業には経営理念がある事、それがないと企業として成り立たないことが書いてありました。

そこで経営理念について勉強しようと思いましたが、経営理念が会社にとってなぜ重要なのか、またなぜ必要であるのかの理由を詳しく書いてある本はいくら探しても見つかりませんでした。著名な方の書籍にも「経営理念」とタイトルを掲げた本の中にも経営についての方法が載っているだけで経営理念については書かれていないのです。そこから経営理念について自分なりに研究をし始めました。有名な野球選手にホームランを打つ秘訣は何ですか?と聞かれても「来た球を打つだけ」と言われるのと同じことで、球を打つ技術やタイミングなど選手自身が理解していれば良い事なのでそもそもなぜ、その技術が必要なのか、タイミングや方法などを文章で残さないですよね。経営も同じでなぜ会社にとって理念が必要でそれがそのような役割を果たすのか書籍やものとして残す事は無く、伝えるとすれば自分の弟子や部下に口頭で伝える場合がほとんどです。

自分なりに経営理念を研究し、11年が経った頃、経営理念とはどういうものなのかを論理的に説明する答えを見つけました。答えといっても独自の考えで、理念をX軸、Y軸、Z軸と3つの視点からみた3次元プログラムです。その後、経営者のための塾をしており、この理論を基に経営を塾生に教えていました。
そんなある日、塾生と共に自らも参加した講演会での話しです。講演された講師の先生は過去に松下幸之助に経営道を直に学んだことのある方でしたが、そのときの松下幸之助の会話の内容を聞いて驚きました。まさに自分が考えていた経営理念とまったく同じ意見を松下幸之助が過去に話しておられたのです。その事実を知った時には身体に電流が流れるのを感じました。

その事がきっかけで自分の考えをまとめた書籍「浸透する経営理念」を執筆しました。経営理念を論理的に説いた日本で唯一の書籍と言われました。






最初は従業員数の少ない中小企業のためでした。成功している大企業ではなく、同じ中小企業の経営者に役立てばと思っていました。しかし、実際は1,000億円稼ぐような企業の経営者の方の目にとまる機会が多いようです。前述したように本の内容としては経営理念をロジカルに説いたものです。書店の経営書、ビジネス書に並んだとしても松下幸之助、稲盛和夫、松原照明という順番なります。経営を勉強したい人にとって著名な方の隣に並ぶ自分は無名の著者であって、タイトルを見てもスルーされてしまう場合がほとんどです。無名だから信じていただけない訳です。

その点、1,000億円稼ぐような企業の経営者は著者ではなく、本の中身で判断されます。経営理念をロジカルに説いた本は自分が執筆したものが日本で初めてということで、本当に必要とされている方は中身を見て購入してくださるようです。また論理的に説明しているため、内容を理解するのも時間がかかります。そのため私は本を書いたことを自分から宣伝する事はありません。売るために書いたわけではないからです。必要な方が手に取ってくださり、勉強のお役に立てればと思っています。

実際、私が開催している経営者のための塾ではこの理論を使って勉強をしていますが、経営についての基礎勉強をしているからこそ理解できるのです。時々天才的な方がいて1万人に2~3人ほどの方はこの考えを最初から理解している方もいらっしゃいます。

私としては、自分が何か特別なものを発見した訳ではなく、誰でも見つけられる考えをたまたま自分が発見したというだけのことに過ぎません。11年もの永い間、疑問に思い自らも経営について行き詰まり失敗続きでした。悩んだ時期があったからこそたどり着いた考えです。

よく、この本を読んだ人から言われることがあります。経営理念を勉強している人は既に高額なお金を払ってセミナーなどで様々な経営者の話を聞いています。それでも理解できないことや、核となる部分を見つけられずにいる場合がほとんどです。そういった人はこの本を読むと、「もっと早くに出会っておけば、高額なお金を使わなくて良かったのに・・・」と悔やまれる方がいらっしゃいます。実はそうではなくてこれまで高額なお金を払って経営理念を勉強してきたからこそ、この本を読んで内容が理解できるのです。その勉強をしていない状態でこの本を読んでも理解は出来ません。






もちろんあります。事業がうまくいかず、経営とは何かわからない時期もありました。
他にも従業員が定着しない、すぐに辞めてしまうこともありました。人・物・金がありませんでした。
反対されたことで支援は無く、信用が得られないことで仕入れも無く、売上もあがらない、なんのために仕事をするのか迷走する。苦労はたくさんしてきました。しかし、父・兄の反対を押し切って起業したのですから、絶対に成功させるという思いが自分の原動力になっていました。6人いた従業員にも当然一緒に仕事をしていましたが、そちらに気を回せるほど気持ちの余裕は無く、社員に対して声を荒げることもたびたびありました。

当時、私はお金を払ってくださるお客様が一番大切だと思っていました。そのため売上が上がらないことで社員に厳しく指示をしていました。今でこそ社員が大切であることが理解できますが、その当時はそんな事も気づきませんでした。

前述したとおり、商社との信用を築くまでに時間のかかったことから、仕入先との関係にも気を配るようになりました。そのため、弊社では顧客満足度よりも先に仕入先満足度、社員満足度の方を重要視しています。
確かに注文をしていただき、お金を支払うお客様も大切です。しかし、鉄鋼を仕入れる商社、仕入先がないと材料は手に入らないし、材料があっても加工してくれる従業員がいないと仕事は出来ません。その人に対して、上から目線で対応することなどいけません。「お客様不満足」といっているわけではありません。仕入先も従業員も大切にすることで、利益の源泉であるお客様にたどり着くという事です。

そういった考えにたどり着いたのは経営理念について勉強を始めてからでした。今ではこれを経営理念の一つとして掲げています。そういった苦労した時期があったからこそ経営理念というものについて考え始め独自の考えを発見するまでに至ったし、自分の力だけではなくて多くの人から助けてもらっている事を学びました。






リーマンショックの時ですね。
経営理念で掲げたように、仕入れ先を大切にしていた事から「松原さんのところにはいつも助けてもらっているから、困っているなら今度はこっちが返す番だ」とご注文いただいた事がありました。他社では赤字になっているところもありましたが、そういった人達に助けられて、弊社は黒字で乗り切る事が出来ました。その時は涙が出ましたね。理念経営を徹底していた結果だと思いました。





ありがとうございました。
平成27年6月30日 7月28日取材

シーエススチール株式会社のHPへ

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